2023/04/19 13:41
私たちが提案する染の技法を紹介します。
黒紋付染め(くろもんつきぞめ)シリーズ
黒紋付染めには、浸染(しんぜん・ひたしぞめ)と引染(ひきぞめ)があります。浸染では紋型紙を紋を入れたい位置に置き、生地の両面から金網で挟んでしっかり縫い付けます。きれいに染まるように、生地を熱湯に漬ける地入れ作業をし、紅の染料を使って紅下染めを行います。下染めが終われば、今度は黒の染料でじっくりと染め上げます。一方、引染は紋の部分に伏糊をして刷毛で黒く染め、白く残った紋の部分に手書きで紋章を入れます。紋当金網(もんあてかなあみ)を使う技法は、江戸時代に活躍した黒紋付染師が生み出した技法を明治時代に改良したものです。「紋当金網付け(もんあてかなあみつけ)」技法と呼ばれている、名古屋黒紋付染め独自のこの技法を用いて、高温の染液で時間をかけて染めるため、深みのある黒色が得られます。名古屋黒紋付染めは、日本の伝統的工芸品に指定されており、色褪せない堅牢な黒色がなによりの特徴です。
黒霧(くろきり)シリーズ
日本に現存する最古の絞り染めは、奈良時代のものです。糸などで布地を強く括って防染する絞り染め技法の「纐纈(こうけち)」は、現在の絞り染めの原点とされており、江戸時代には多くの技法が完成しました。原始的な染色技術が用いられている絞り染めですが、絞り方によって、さまざまな美しい表情が生まれます。いくつか絞り方がありますが、絞り染めのもっとも重要な工程は「絞括」で、この工程を手作業で丁寧に行うことで、独特の模様が表現できます。同じ絞り方でも、まったく同じ作品が作れないところが、絞り染めの面白いところ。染め上がりは、一点一点すべて異なります。絞り染めの伝統技法のひとつであるむら染めは、ゴムや紐で生地を括り、わざと染めむらができるようにしたもの。生地を縛った部分は染まらず、生地そのものの色が残りますが、固定の強弱などによって「にじみ」や「ぼかし」が生まれ、味わいのある仕上がりになります。
黒半(くろはん)シリーズ
染色技法のひとつである絞り染めは、布地を糸で括ったり、板で挟んだり、縫い締めたりしてから染める技法です。絞り染めは、6世紀ないし7世紀に日本に伝わったと言われており、奈良時代には衣類を染める技術として用いられていました。絞り染めの最盛期は江戸時代で、たくさんの技法が誕生します。そもそも絞り染めは、模様染めの一種で、もっとも素朴な技法です。シンプルな技法でありながらも、絞り染めの技法は百種類近くもあるとされ、現在まで伝わってきました。染め分けの技術も、数多い絞り染めの技法のうちのひとつです。生地を違う色に染め分けることで、さらに表現の幅が広がります。染め分けの技術を使って手作業で丁寧に染め上げられた作品は、色と色の境目がぼかしになっていることが多く、「にじみ」や「ぼかし」の表情にひとつとして同じものはありません。
黒抜(くろばつ)シリーズ
模様染めに分類される捺染法のひとつに、抜染(ばっせん)があります。抜染は、浸染で生地を均一に染めた後、染料を分解・脱色して模様をあらわす技法です。酸化剤や還元剤などの抜染剤を含んだ糊(捺染糊、もしくは抜染糊と呼ばれる)を生地に印捺し、乾燥・蒸熱工程に入ります。スチーミングすることで染料の分解を促進しますが、この蒸熱工程が作品の仕上がりを大きく左右することに。最後に、水洗いをして糊を落とし、生地に模様が浮かび上がれば完成です。抜染には三つの種類があり、白色抜染、半抜染、着色抜染に分けられます。生地に印捺した捺染糊は乾燥させると固くなりますが、すべて水で洗い流すため、生地の風合いを損ねにくいのが抜染のメリットです。しかしながら、抜染は手間暇がかかる技法で、抜染剤の扱いを間違うと生地の脆化を招くなどのトラブルが発生するため、高い技術力が求められます。
黒暈(くろぼかし)シリーズ
古来より行われてきた染色技法のひとつであるぼかし染めは、染色の工程で意図的にぼかしを入れる染め方です。ぼかし染めでは、全体をぼかすこともあれば、一部分だけをぼかして染めることもあります。また、単色のこともあれば、複数の色を用いて濃淡をつけることも。一般的に、生地に染料を通さない特殊な防染糊を塗ると、その部分には染料が染み込みません。しかし、ぼかし染めでは、染めるときにあえて防染糊で境を作らず、「にじみ」や「ぼかし」をデザインとして活かします。濃淡や色を変えることで幅広い表現が行えるぼかし染めは、手作業でしか生み出せません。ぼかし染めにはいくつか種類がありますが、色の境界線があいまいなほど高い技術が求められ、職人のセンスと腕の見せ所となっています。